残り香
酒の席、食事の席、喫茶の席、会議の席など、かつてはタバコが欲しくなる場所でも、今はその欲求が出てこない。喫煙場所では時には嫌悪すら感じる。
タバコの嗜好は無くなったと思っていた。
しかし、何かの折、ふとした場所(たとえば、カーペットが敷かれた往来の少ない廊下)でタバコのかすかな残り香を感じることがある。残り香の具合が全体の空気と周りの雰囲気の中で実の絶妙の配分であるとき、
「あ~吸いたい」
と思う。
「あ~旨いだろうな」
と思う。
<旧ホームページより転載 2003年7月綴>